鍼には、様々な種類の形状があり、大きく分けて、「刺す鍼」と「刺さない鍼」に分類されます。
「刺す鍼」は、言葉の通り、体内に刺入する用途で用いられており、毫鍼(ごうしん)などがあります。
皆さまがイメージされている「刺す鍼」は、毫鍼(ごうしん)です。
毫鍼(ごうしん)は、鍼治療の中でも、最も多く使用されています。
「刺す鍼」の他にも、鍼を体内に刺入せず、皮膚を擦ったり、押圧したりする用途で使用される「刺さない鍼」があります。
「刺さない鍼」には、ローラー鍼やてい鍼などがあります。
「刺さない鍼」による皮膚刺激は、痛みの軽減効果だけでなく、心地良さやリラクゼーション効果をもたらします。
心と身体は、それぞれが独立しておらす、お互いに影響し合う「心身相関」の関係にあります。
心が疲労状態にあると、身体の健康状態に影響を及ぼし、また身体の疲労は、心の健康に影響を及ぼします。
例えば、慢性的な肩こりや腰痛は、身体に痛みを引き起こし、その慢性的な痛みによって、身体への緊張状態やメンタルの部分の不調にもつながる可能性が出てきます。
場合によっては、交感神経優位による自律神経の乱れの原因にもなります。
慢性的な身体の不調は、心の部分にも影響を及ぼしてしまうのです。
鍼治療は、「心身相関」の考えに基づいた治療であると考えています。
ローラー鍼やてい鍼などの「刺さない鍼」での治療効果として、刺激部位付近での鎮痛効果と心身のリラックス効果があります。
「刺さない鍼」での刺激様式は、擦ったり押圧したりすることによる「触圧刺激」です。
皮膚への「触圧刺激」は、刺激部位付近での鎮痛効果をもたらします。
その鎮痛効果は、「脊髄分節性鎮痛」によるものです。
分かりやすくいうと、痛い箇所を優しく撫でる「痛い痛いの飛んでけ」の機序です。
また、皮膚に「触圧刺激」を加えると、脳内でα波が優位となり、そして快楽物質であるドーパミンが放出されるといわれています。
ヒトの脳内では、活動に応じて、α波、β波、θ波などの脳波が出現します。
α波は、リラックスしている状態の時に出現し、β波は、日常生活の活動時に出現します。
そして、θ波は、睡眠時にみられます。
さらに、「刺さない鍼」での心地良い鍼刺激は、体性-内臓反射を介しての自律神経を整える作用があるともいわれています。
つまり、ローラー鍼やてい鍼による皮膚への「触圧刺激」は、痛みの軽減だけでなく、心身のリラックス効果をもたらしてくれるのです。
「刺す鍼」である毫鍼(ごうしん)と「刺さない鍼」であるローラー鍼やてい鍼を併用することで、両者の良さを引き出し、より高い治療効果が得られると考えています。