筋肉に鍼を刺入すると、刺激部位付近での筋血流量が増加し、そして筋痛の軽減効果があります。
筋血流量が増加すると、滞っていた老廃物や発痛物質を洗い流し、身体の疲労回復や痛みを和らげてくれるのです。
ヒトの身体には、寒さや熱さなどの外部からの刺激に対して反応する「感覚受容器」と呼ばれる感覚センサーが全身に分布しています。
例えば、熱さや冷たさを感じる「温度受容器」、皮膚を擦られたりする時に感じる「触圧受容器」など刺激様式に応じた感覚受容器です。
その中でも、鍼刺激や灸刺激に反応する受容器として、ポリモーダル受容器と呼ばれる感覚受容器があります。
ポリモーダル受容器は、筋肉、皮膚、及び関節など、全身に分布しているといわれております。
鍼刺激によって、ポリモーダル受容器が反応すると、血行促進や鎮痛など、筋肉にさまざまな作用を引き起こします。
筋肉に鍼を刺入すると、筋肉にあるポリモーダル受容器から中枢に向けて、2つのルートをたどります。
1つめは、鍼の刺激部位から脊髄を介して脳内に行くルートです。
鍼刺激が脳内に到達すると、脳内で痛みを抑える物質(β-エンドルフィンやエンケファリンなど)が分泌されます。
それらの脳内の物質の働きによって、鎮痛作用が発現されます。
2つめは、鍼刺激が、脊髄に行かずに、刺激部位付近の筋肉の血管に作用するルートです。
鍼刺激が筋肉の血管に到達すると、血管を拡張する物質(CGRPや一酸化窒素など)が分泌されます。
血管拡張物質の作用によって、筋肉の血管が拡張され、刺激部位付近での筋肉の血流量が増加します。
さらに、鍼を物理的に刺入する「微細な筋損傷」によっても、刺激部位付近での筋血流量の増加と筋痛を軽減する効果があります。
筋肉に鍼を刺入し、微細な筋損傷を与えると、筋肉の中に存在するATP(アデノシン三リン酸)、ADP(アデノシン二リン酸)、アデノシンなどが、筋肉内で漏出されます。
それらの物質は、血管を拡張させる作用があり、筋血流量の増加に作用します。
また、アデノシンには、血管拡張作用だけでなく、鎮痛効果もあります。
毫鍼などの刺す鍼を用いて、筋肉に微細な損傷を与えることでも、筋血流量の増加と筋肉の鎮痛効果があるのです。
さらに、鍼に微弱な電流を流す鍼通電療法は、刺激部位付近での筋肉の収縮を伴います。
筋肉のポンプ作用によって、より高い血行促進作用を得ることが出来るのです。
鍼は、筋肉に対しての治療として、非常に効果があると考えております。
筋肉の痛みでお悩みの方、鍼治療を取り入れてみてはいかがでしょうか。
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