肩の施術について

肩関節の痛みによって、巻き肩による肩の痛み腱板損傷などの症状が出現することが多いです。整骨と鍼灸治療は、それらの症状について、お役に立てることができます。

肩関節をスムーズに動かす為には、「胸を張った姿勢」で行うことが大切です。「胸を張った姿勢」と「前かがみ姿勢」の両方で、肩を挙げてみてください。「胸を張った姿勢」の方が、肩が上がり易かったと思います。反対に、「前かがみ姿勢」で肩を挙げようとすると、肩関節への負荷が大きくなります。肩関節に痛みを抱えている方の多くは、胸が張りにくい傾向があるのです。当院では、「患部の痛みを軽減する為の鍼灸治療」と「胸が張れやすくなる為の骨格アライメントの調整」を行っております。

肩甲骨の痛みを伴う腱板損傷への鍼治療

腱板損傷は、肩を挙げた際に、肩甲骨から肩関節にかけて痛みを訴えることが多い整形外科的疾患です。肩関節は、肩甲骨と上腕骨で構成されており、身体の関節の中でも、最も可動域が大きい関節です。また、肩関節は、関節可動域が大きい分、肩甲骨と上腕骨との関節面が非常に浅くなっております。浅い関節面の肩関節を支える為には、筋肉や靭帯などの軟部組織の関与が大きくなってきます。肩関節をスムーズに動かす為には、肩関節まわりの筋肉などの働きが大切になってくるのです。

肩甲骨と上腕骨をつなぐ筋肉として、棘上筋きょくじょうきん棘下筋きょっかきん小円筋しょうえんきん、そして肩甲下筋けんこうかきんの4つの小さな筋肉があります。棘上筋きょくじょうきん棘下筋きょっかきん小円筋しょうえんきん、そして肩甲下筋けんこうかきんは、肩関節のインナーマッスルであり、腱板(ローテーターカフ)とも呼ばれております。それらの筋肉は、肩甲骨に付着しており、肩関節を支える役割を果たしているのです。肩関節は、腕を後ろに回したり、挙上したりなど、膝関節などの他の関節では到底行うことの出来ない複雑な動きが可能です。しかし、肩関節は、そのような複雑な動きが可能なだけに、肩まわりの筋肉や腱などの軟部組織にストレスが加わり易くなります。肩関節の特徴から考えても、肩まわりの筋肉や腱などを痛めることが多くなってくるのです。

肩まわりの障害の中でも、腱板損傷の頻度が高いといわれております。腱板損傷は、重い荷物を持ち上げるなど、肩まわりの筋肉への反復的なストレスによって、引き起こされることが多いです。腱板損傷は、腱板(棘上筋きょくじょうきん棘下筋きょっかきん小円筋しょうえんきん肩甲下筋けんこうかきん)の損傷です。腱板の中でも、棘上筋きょくじょうきんの損傷が最も多いといわれております。

棘上筋きょくじょうきんは、肩甲骨の上側(棘上窩きょくじょうか)から上腕骨を走行する筋肉であり、腕を挙げる動作(肩関節の外転)に関わっている筋肉です。腕を挙げる動作(肩関節の外転)は、肩のアウターマッスルである三角筋(肩を覆っている大きな筋肉)と協働して行われております。腱板損傷によって、棘上筋きょくじょうきんが損傷されると、協働筋である三角筋への負荷が大きくなり、三角筋の硬さにもつながることが多いです。実際に、棘上筋きょくじょうきんの損傷を伴う腱板損傷の治療を行う際は、棘上筋きょくじょうきんだけでなく、協働筋である三角筋へのアプローチも大切になってきます。

腕を挙げる動作(肩関節の外転)は、棘上筋きょくじょうきんや三角筋の筋肉の働きだけでなく、肩甲骨まわりの筋肉も関与します。そして、腱板損傷の方の多くは、肩甲骨まわりの筋肉も硬くなっている傾向があります。肩甲骨まわりの筋肉も治療ポイントになります。

腱板損傷は、腱板の損傷によるものではありますが、肩関節単体ではなく、肩甲骨まわりの筋肉にも影響が出ている可能性が高いのです。局所だけを診るのではなく、身体全体の状態を確認し、治療すべき部位を同定することが大切であると考えております。

腱板損傷による筋肉の炎症を和らげる方法として、鍼治療は効果的であると考えております。腱板は、肩のインナーマッスルである為、身体の中に刺入することが出来る鍼は、腱板損傷の治療に対して、相性が良いのです。しかし、鍼治療の対象になるのは、筋肉が断裂していないタイプの腱板損傷です。断裂しているタイプの腱板損傷に対しては、整形外科などの専門医への受診が必要になってきます。筋肉の断裂を伴わない腱板損傷は、鍼治療の適用であり、効果的な方法であると考えております。

巻き肩による首こりと肩関節の痛みの鍼治療

巻き肩とは、肩が内側に入っている状態であり、肩こりや首こりの方に多くみられます。また、巻き肩は、肩甲骨が外側に開くことにもつながります。肩甲骨が外側に開くと、首の筋肉や肩関節にストレスが加わりやすくなります。巻き肩が原因で、「首の筋肉のコリ」や「肩関節の痛み」を引き起こす可能性が出てくるのです。

「巻き肩」と「肩関節の動き」の関係を体感して頂く為に、簡単な実験を行いたいと思います。

  • 胸を張り、肩甲骨を背骨に寄せた状態で、肩を挙げてみてください
  • 猫背になり、肩甲骨を外側に開いた状態(巻き肩の状態)で、肩を挙げてみてください

おそらく、前者の「胸を張った状態」の方が、肩が挙がりやすかったと思います。胸を張った状態で肩を動かした方が、肩関節へのストレスが少なくなるのです。また、胸を張った状態は、肩関節だけでなく、首の筋肉へのストレスの軽減にもつながります。つまり、胸を張り、肩甲骨を背骨に寄せる姿勢は、「首の筋肉」や「肩関節」へのストレスを軽減することが出来るのです。

肩関節に痛みを抱えている方の多くは、肩甲骨が外側に開いている「巻き肩の状態」である傾向があります。肩関節は、「肩甲骨」と「上腕骨」で構成されています。肩関節を挙上する際は、「肩甲骨」と「上腕骨」は、一定の割合で、同時に動いています。「肩甲骨」と「上腕骨」が動く割合は、1:2です。例えば、肩関節を180度挙上する際は、肩甲骨が60度動くのに対して、上腕骨は、120度動きます。肩を挙上した際の、「肩甲骨」と「上腕骨」の動きを、「肩甲上腕リズム」といいます。肩甲上腕リズムからみても分かるように、肩関節の動きには、肩甲骨が大きく関与しているのです。肩甲骨が外側に開いている状態では、肩甲骨の動きが制限されます。肩甲骨が制限されている分、肩関節の挙上時、肩まわりの筋肉などの組織に負担がかかってしまうのです。

肩関節を治療する際は、鍼治療などの痛みに対する治療も大切ではありますが、それに加えて、身体全体の骨格バランスを整えることも大切であると考えています。身体全体の骨格バランスを整える目的は、胸が張れやすい状態(肩甲骨を背骨に寄せた状態)にすることです。胸が張れやすくなると、肩関節の動作時に、肩まわりの筋肉などの組織のストレス軽減につながります。結果として、肩関節への治療効果につながるのです。

肩関節の治療を行う際は、「痛みを軽減する目的での鍼治療」と「胸が張れやすい骨格に調整する施術」が大切であると考えております。

姿勢と肩関節の動きについて

肩関節は、「背中にある肩甲骨」と「上腕の骨」で構成されています。肩関節を動かす時は、「上腕の骨」だけでなく、「肩甲骨」も同時に動きます。前かがみ姿勢の状態で肩を動かそうとすると、肩の動かしにくさを感じると思います。肩関節のインナーマッスルである回旋筋腱板(ローテーターカフ)にも負荷が加わり、肩の動きが損なわれ、場合によっては痛みがあらわれるのです。

前かがみ姿勢での動作は、肩関節に反復的なストレスが加わります。肩へのストレスを軽減する為には、適切な姿勢で肩を動かすことが大切です。適切な姿勢を維持しやすくするためには、骨格アライメント(骨や関節の並び方)の調整を行い、お身体全体のバランスを整える事が大切であると考えています。

ヒトの身体は、建物に例える事が出来ます。骨盤の部分は、建物でいうと1階部分に相当します。例えば、建物の1階部分である骨盤に歪みがあると、上層階にあたる肩や肘、そして首や背中にも歪みが生じ、硬さや痛みがあらわれる原因となります。お身体全体のバランスを整えることは、肩に負担の軽減につながります。お身体全体で協調し合っているのです。患部だけでなく、お身体全体のバランスを考え、施術を行う事が、理想的であると考えております。

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