自律神経は、「交感神経」と「副交感神経」に分類されております。
交感神経は、心は身体が活動的なときに優位に働き、「闘争と逃走の神経」とも呼ばれております。交感神経が優位になると、心拍数が増加し、胃腸の活動は低下します。副交感神経は、心と身体がリラックスモードのときに優位に働きます。副交感神経が優位になると、心拍数が低下し、胃腸の活動は活発になります。
「交感神経」と「副交感神経」がバランス良く働くことで、「心身」ともに元気よく活動することが出来ます。
「心身の健康」と「自律神経のバランス」は、お互いに関係し合っているのです。
例えば、「慢性的な肩こり」で悩まされている方の多くは、首や背中だけでなく、全身の筋肉が硬くなっている傾向があります。全身の筋肉が硬くなることで、緊張状態となり、「交感神経」が優位に働く可能性が出てきます。交感神経が優位になると、手足が冷えたり、睡眠にも影響でてくるなど、「心」の部分に影響を及ぼしてしまうことにもつながります。
何かとストレスの多い現代においては、交感神経が優位になり易い環境にあります。副交感神経を優位とし、心身のリラックス状態を得ることが大切になってくるのです。
「心」と「身体」の施術が出来る治療として、「鍼治療」が有効であると考えております。
ここでは、自律神経失調症への鍼灸治療の適用についてお伝えしていきます。
筋肉の硬さや自律神経の乱れを整える効果があります
長時間のパソコン作業やスマートフォン操作などが原因で、慢性的な肩こりや首こりなどによる筋肉の硬さや痛みを引き起こすケースが多くみられます。
首や背中まわりの筋肉の硬さや痛みは、交感神経が優位になりやすく、血行が滞り、場合によっては、頭痛につながる可能性もあります。
頭痛の原因は、多岐に渡りますが、首まわりの筋肉のトリガーポイントが原因で、頭痛を引き起こすといわれております。
トリガーポイントは、筋肉の中にロープ状の硬結を触れることが多く、局所だけでなく、局所から離れた場所にも痛みが放散されることが特徴です。
首まわりの筋肉のトリガーポイントによって、首まわりだけでなく、頭部にも痛みを引き起こすことがあるのです。
自律神経には、交感神経と副交感神経があります。
交感神経は、興奮モードの時に優位となり、血管を収縮させ、心拍数や血圧を上げる作用があります。
副交感神経は、リラックスモードの時に優位となり、血管を拡張させ、心拍数や血圧を下げる作用があります。
交感神経と副交感神経がバランス良く働くことで、心身ともに健康を保つことが出来るのです。
しかし、何かとストレスのかかることが多い現代社会において、交感神経が優位になり易い環境となっております。
ストレスがかかりやすい多くの現代人にとって、出来るだけ副交感神経を優位にしていく必要があると考えています。
副交感神経を優位にする為に、定期的に温泉に入ったり、マッサージを受けたりする方法がありますが、その中でも、鍼治療を取り入れられることをおすすめします。
鍼の代表的な効果として、筋肉の硬さを和らげ、痛みを軽減させる効果があります。
筋肉や皮膚などに鍼を刺入すると、鍼刺激によって、脳内で痛みを抑える物質である「β-エンドルフィン」や「エンケファリン」などが分泌されます。
「β-エンドルフィン」や「エンケファリン」は、内因性オピオイドと呼ばれており、強い鎮痛効果のある脳内物質です。
自らの体内で分泌させる為、依存性や副作用がないことが利点です。
また、鍼は、痛みの軽減効果だけでなく、血行を良くする効果があります。
鍼の刺激部位付近で血行が促進されると、滞っていた発痛物質や老廃物を洗い流し、疲労回復の効果も期待出来ます。
さらに、心地よい鍼は、副交感神経を優位にし、脳波を下げ、そして快楽物質である「ドーパミン」が分泌させるといわれております。
鍼治療は、痛みの軽減だけでなく、硬くなった筋肉を和らげ、血行を良くする効果があるのです。
また、鍼による心身のリラクゼーション効果によって、副交感神経が優位とし、自律神経のバランスを整えることにもつながります。
スマホ首に伴う吐き気や息苦しさを軽減する効果があります
長時間のスマホ操作やパソコン作業は、スマホ首になりやすくなり、首や背中の筋肉に持続的なストレスが加わります。
首や背中への持続的なストレスは、筋肉の過緊張を引き起こし、交感神経が優位になりやすくなります。
交感神経優位の状態が続くと、自律神経の失調に伴う吐き気や息苦しさにつながる可能性が出てくるのです。
スマホ首とは、頚椎の前弯(首の背骨のカーブ)が少なくなっている状態です。
頚椎(首の背骨)は、真横から見ると、前弯(前凸のカーブ)を描いております。
しかし、反復的な前かがみ姿勢などが原因で、頭や首が前のめりの状態になると、頚椎のカーブが失われます。
頚椎が真っ直ぐの状態に近づくことで、スマホ首になる可能性が出てくるのです。
スマホ首は、真横から見ると、真っ直ぐな状態に見えることから、ストレートネックとも呼ばれております。
スマホ首は、頭の位置が重心線に対して、前方にスライドします。
その為、首や背中の筋肉で、頭の重さを支える必要が出てきます。
頭の重さは、体重の約10パーセントといわれております。
例えば、体重60kgであれば、頭の重さは、約6kgです。
頭の重さは、身体全体の比率から考えても、非常に重いです。
その頭の重さが、首や背中の筋肉に持続的に加わるのですから、その負荷は相当なものです。
スマホ首によって、肩こりにつながる可能性が出てくるのです。
また、スマホ首が原因での肩こりは、首や背中の筋肉に過緊張を引き起こし、自律神経の失調に伴う吐き気や息苦しさを訴えることがあります。
首や背中の筋肉の過緊張は、交感神経が優位になりやすくなります。
交感神経が優位になると、血管の収縮によって、筋血流量の低下につながります。
筋血流量の低下は、筋肉内に発痛物質や老廃物が滞りやすくなり、新たな筋肉の緊張を引き起こします。
新たな筋肉の緊張は、交感神経がより優位になる「スパイラルの状態」を引き起こしてしまうのです。
そのような自律神経の失調症状を軽減する為には、首や背中の筋肉の過緊張を緩めることが必要であると考えております。
鍼治療は、首や背中の筋肉の過緊張を緩め、そして心身のリラクゼーション効果を得ることが出来ます。
また、心地良い鍼刺激は、副交感神経を優位とし、自律神経の失調を整える効果があることも分かっております。
鍼治療は、筋肉の過緊張による自律神経の失調を整える方法として、有効な方法なのです。
スマホ首に伴う吐き気や息苦しさでお悩みの方、鍼治療を取り入れてみてはいかがでしょうか。
腹式呼吸による自律神経のコントロール
呼吸には、さまざまな呼吸法がありますが、代表的な方法として、「腹式呼吸」と「胸式呼吸」があります。
呼吸は、主に「横隔膜」と肋骨の間にある「外肋間筋」の働きによって行われています。
また、腹筋や背筋、そして首の筋肉も「呼吸補助筋」として、呼吸動作に関わっています。
それらの呼吸に関わる筋肉が、収縮や弛緩することによって、呼吸動作が円滑に行われているのです。
1回の呼吸で、より多くの酸素を取り込み、そして二酸化炭素をより多く吐き出す為には、ゆっくりとした深い呼吸を行うことが大切です。
ゆっくりと深い呼吸をする方法として、「横隔膜」の働きを意識する「腹式呼吸」をおすすめします。
「腹式呼吸」は、副交感神経を優位する効果があります。
そして、心拍数や血圧、そして脳波が下がることによる心身のリラックス効果をもたらしてくれます。
さらに、「腹式呼吸」は、脳内物質である「セロトニン」の分泌を高める効果もあります。
「セロトニン」は、精神の安定や鎮痛効果に関わっている脳内物質です。
「腹式呼吸」による「セロトニン」の働きによって、精神面のリラックス効果を高めてくれるのです。
一方、「胸式呼吸」は、「横隔膜」の働きよりも「外肋間筋」の関与が大きくなります。
「胸式呼吸」は、「横隔膜」の関与が少なくなる為、「腹式呼吸」に比べて、体内外の換気量が少なくなり、早くて浅い呼吸につながりやすくなります。
また、「胸式呼吸」は、交感神経が優位になり易くなるともいわれております。
つまり、「腹式呼吸」では、副交感神経が優位になり、「胸式呼吸」では、交感神経が優位になりやすくなるのです。
一般的に、自律神経は、自分の意思でコントロールすることが出来ません。
しかし、例外として、呼吸は、副交感神経と交感神経のバランスをコントロールすることが出来ます。
少し話が変わりますが、1回の呼吸での「呼気」や「吸気」のタイミングによっても、心拍数の変化がみられます。
息を吐く際は、心拍数が低くなり、息を吸う時は、心拍数が高くなります。
つまり、「呼気」の際は、副交感神経が優位となり、「吸気」の際は、交感神経が優位になるのです。
武道やヨガなどさまざまな分野において、呼吸法が重視されているのも納得出来ます。
何かとストレスがかかりやすい現代である為、多くの方は、交感神経が優位になりやすい傾向があります。
交感神経が優位な状態が続くと、全身の筋肉が強張り、場合によっては、慢性的な肩こりをつながる可能性も出てきます。
交感神経が優位になりやすい現代人にとって、副交感神経を優位にする「腹式呼吸」は、非常な大切な呼吸法であると考えています。
呼吸は、気軽に取り入れることが出来る健康法です。
心身のリラックス効果を高める方法として、「腹式呼吸」を取り入れてみてはいかがでしょうか。
心身のリラクゼーション効果があります
鍼といえば、体内に刺入する「刺す鍼」をイメージされると思います。
その「刺す鍼」の代表的な鍼が、毫鍼と呼ばれる鍼です。
毫鍼は、鍼治療の中でも、最も多く使用されており、皆さまがイメージされている鍼です。
毫鍼の他にも、用途に応じて、様々な種類の鍼が存在します。
それは、体内に刺入せず、皮膚を優しく擦ったり、押圧したりする用途で用いられる「刺さない鍼」です。
「刺さない鍼」の代表的な鍼として、「ローラー鍼」や「てい鍼」などがあります。
「ローラー鍼」や「てい鍼」は、皮膚を優しく擦る用途で用いられるため、心地よさを得られることが特徴です。
身体の痛みを和らげ、心身のリラクゼーション効果が得られるのです。
さて、心と身体は、それぞれが独立しておらす、お互いに影響し合う「心身相関」の関係にあります。
心の疲労は、身体の健康状態に影響を及ぼし、そして身体の疲労は、心の健康に影響を及ぼします。
筋肉に痛みを引き起こし、その痛みが続くと、心の不調にもつながる可能性が出てきます。
また、筋肉の緊張状態が続くことで、交感神経が優位となり、自律神経の乱れの原因にもつながります。
慢性的な身体の不調は、心の部分にも影響を及ぼしてしまうのです。
鍼治療は、「心身相関」の考えに基づいた治療法です。
「ローラー鍼」や「てい鍼」を用いた「刺さない鍼」での鍼治療は、刺激部位付近での鎮痛効果と心身のリラクゼーション効果がもたらされます。
「ローラー鍼」や「てい鍼」による刺激様式は、皮膚を擦ったり押圧したりする「触圧刺激」です。
皮膚への「触圧刺激」は、刺激部位付近での鎮痛効果を得ることが出来ます。
その鎮痛効果は、「脊髄分節性鎮痛」によるものです。
分かりやすくいうと、痛い箇所を優しく撫でる「痛い痛いの飛んでけ」の機序です。
また、「ローラー鍼」や「てい鍼」による心地良い鍼刺激は、副交感神経を優位とし、心身のリラクゼーション効果が得られます。
脳内でα波が優位となり、そして快楽物質であるドーパミンが体内で放出されるといわれています。
ヒトの脳内では、活動に応じて、α波、β波、θ波などの脳波が出現します。
α波は、リラックスしている状態の時に出現し、β波は、日常生活の活動時に出現します。
そして、θ波は、睡眠時にみられます。
つまり、「ローラー鍼」や「てい鍼」による皮膚への「触圧刺激」は、痛みを和らげるだけでなく、心身のリラクゼーション効果をもたらしてくれるのです。
刺す鍼である「毫鍼」と刺さない鍼である「ローラー鍼」や「てい鍼」の特性を上手に使い分けることで、両者の良さを引き出し、より高い治療効果が得られると考えております。
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